一般不妊治療、人工授精、ART、妊娠成績など、1年間の不妊治療実績を報告します。

不妊治療の検査機器

当院の治療実績

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井上善レディースクリニックの2019年1月1日から12月31日までの治療実績をご報告致します。
1妊娠患者数
妊娠患者数表
※一般不妊治療の妊娠症例数は2018年が85名で9名増加しています。排卵誘発を行わない自然周期での妊娠例が58例で、半数以上が排卵誘発を行う事なく早期に妊娠が成立しています。排卵誘発としては、クロミッド周期での妊娠が15例、レトロゾール周期での妊娠が13例でほぼ同数です。双胎妊娠が2例ありました。
2人工授精について
人工授精治療周期数は1022周期でした。妊娠患者数は72名で妊娠率は6.4%でした。昨年と比較して妊娠された患者さんの数は14名程増加していますが、昨年度の妊娠率が6.8%であり、ごくわずか全体の妊娠率が低下していました。人工授精施行数は昨年が824周期でしたので約1.24倍となっており、かなり増加しています。タイミング療法と異なり人工授精ではほとんどが排卵誘発を併用して妊娠されていました。クロミッド周期が23例、ゴナドトロピン周期が12例、低用量漸増法が5例などです。一般不妊治療と同様に、今年はレトロゾール使用例が増加しており、妊娠例が16例でゴナドトロピン療法より多い結果でした。人工授精による多胎妊娠はありませんでした。
3高度生殖医療について
(1)採卵周期407周期 平均年齢 37.4歳
(2)胚移植周期:383周期 平均年齢 37.0歳
(3)妊娠成績
高度生殖医療
※採卵周期は2018年が301例でしたので約1.35倍に、胚移植周期数は269周期から383周期と約1.42 倍に増加しています。採卵周期数と胚移植周期数の増加はほぼ同程度ですが、今年も移植キャンセルとなる患者さんが多かった印象です。卵巣予備能が低く採卵できなかった周期が27周期、受精異常や分割不良で移植が出来なかった症例が42周期ありました。年齢が比較的若年でもAMH(抗ミュラー管ホルモン)値が0.5ng/mLを切っている患者さんも多く見られ、欧米のように卵子提供を行うことができない本邦では、低刺激で採卵を繰り返す以外の方法があまりないのが現実です。ただこのような患者さんでも根気よく採卵を繰り返すことで妊娠に至る方も少なくなく、厳しい状況ではありますが心を一つにして治療していく事が大事であると感じています。

新鮮胚移植の妊娠率は満足できるものではありませんでした。症例の多くが凍結胚移植を選択しており、症例数も少ないことや、これまでの治療経過でなかなか胚盤胞が得られず、分割胚で移植する症例が多いことが原因と考えています(新鮮胚移植では分割胚移植が73%、胚盤胞移植が27%であったのに対して凍結融解胚移植では分割胚移植が13%、胚盤胞移植が78%、二段階移植が9%でした)。凍結胚移植の妊娠率も昨年の40.2%と比較して大きな変化はありません。患者さんの平均年齢は2018年と2019年で大きな変化はありません。
(4)年齢別妊娠成績
年齢別移植周期数
全胚移植周期を対象とした年齢別移植周期は次の図に示すとおりで、2018年と比較して35歳から44歳までの年齢層で治療周期が増加していました。一方で20代の方も増加しており、このためにすべての症例の平均年齢があまり変わらなかったものと思われます。
年齢別移植周期数グラフ
年齢別妊娠率・流産率
全胚移植周期を対象とした妊娠率・流産率を示します。妊娠率は20代では33%、30代前半では53.0%程度でした。20代の妊娠率が今年は期待したほど高くなく、若年でも胚質が不良な症例や胚質が良好でも、反復着床不全で妊娠までに数回の移植を要する症例が増えた印象でした。

30代後半でも妊娠率、流産率は30代前半と比較して遜色のないものでした。40代の妊娠率は22.8%で比較的良好であると思いますが、年齢の影響で流産率が50.0%と高いことが問題でした。やはり加齢による胚質の劣化・染色体異常の発生が大きな要因であると思われます。今後はPGT-Aなどの染色体異常の検査を行うこと、高齢であり、獲得した胚数が少ない症例では移植前に着床障害の検査を行うなどの対応を考えて行きたいと思っています。
年齢別妊娠率・流産率グラフ
4今後の展望
2020年6月より新たに導入したエンブリオスコープ(タイムラプス付き培養器)の運用を開始する予定です。この装置は一定時間ごとに胚の状況を継続的に撮影して、胚の形態の情報や分割の時間情報などを蓄積し、その情報を元にAIが移植に最適な胚を選択する機能を有しています。これまで胚培養士の目視による胚の形態の主観的評価で移植胚を決定していましたが、それにこのような情報が加わることで、更に正確に移植に適した最良の胚の選別ができるようになると思います。一人でも多くの患者さんの願いを叶えるために、スタッフ一同今後も不断の努力を継続して参ります。

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